松本多様体

https://www.utp.or.jp/book/b302120.html


通称「ラノベ」と呼ばれるラノベ数学書

ラノベって言ってんのは数学科でイキってるやっていっけている賢しいお坊ちゃん賢い御仁だけだと思うし、そもそも数学科行ってない人が数学書読むなんて機会なかなかない*1*2ので、数学科で写経修行授業受けてる前提のラノベ判定だと思った。

 

例えば「実数軸上の関数」「集合族」を耳にしたら筆者のようなパンピーでは「んんんんんぁぁああああああああああああああああ!!!!」って悶絶する。でもそういうイチゲンサンオトコワリ門前祓い格調高いフォーマルなお言葉を目にしてもいちいち拒絶しないで「ああこういうことにゃんね~」「にゃんにゃん♡」ってぶりっ子可愛さを崩さずスッと飲み込める人材とか、「そもそも普通の微積分のグラフって実数から実数への関数を2次元ユークリッド空間上の曲線として…」とかそういう生まれついて"新人類"にインプットされている知識のセットアタリマエのことに対しても明瞭で具体的な説明を適切な言葉で与えることを可能とする知的レベルをお餅の人材向けの「わかりやすい説明」ということなのだと思う。
それか「これ進研ゼミ/マセマティカ/絵本/親の書斎で見たやつ!」って感じであらかじめインプリンティングされている人向けの「わかりやすい説明」ってことなんだろう。
ともかく、松本多様体では多様体用語と主な定理とそのお気持ちの「わかりやすい説明」を徹底している様子は見受けられはする。けれど、あまりに愚直なやり口すぎて、わかりやすいってそういうことじゃないだろ、知的ギャップってそういうことじゃ埋められないだろう、ただくどくした文の量多くしただけじゃん、その文量多めの説明読んで分かる奴は多少の時間かければ線形代数微積分の知識だけを使って自力で「わかり」に到達できるんじゃねとか、いろいろ不満がある。何のモチベ維持にもならない長々しい説明*3
でもそれって限られた人*4に最適化された「わかりやすさ」でしかないのは明らかなので、ラノベ連呼勢*5はもっとその点自覚してもいいんじゃないかと思う。

そもそも数学科の人は一年時に集合位相というほか学科がやらんような科目をやらされると風の噂で聞いたことがあるけれど、他学科のやたら説明不足*6な「微積分」の授業に比べれば「なんて親切な前置き」*7と思うくらい、基礎の話にしつこく触れくれるらしいのだ。大学時代をそういう時間に費やすことができるのなら夢みたいだと思うけれど。

一様収束?点列?コンパクト?なんて?*8実数の公理って?*9とか言う大事な話を駆け足で行うと、基礎が疎かなまま証明文を文字通りの写経をさせられることになる。20代前半までの一般人の国語力で数学の証明文を「理解」するのって無理筋*10だと思うんだけど、大学の先生っや数学徒って高校までの国語教育を糾弾しがちな傾向があることと*11関係がありそう。

これ読んでる人になんで大学数学をみんな(誰?)嫌がってる*12のか、なんで数学徒が怖がられてるのか、漠然と伝わってくれればいい*13けれど、あれも悪いこれも悪いって言うばかりでは芸がないので、過去自分がやった多様体勉強法をざっくり書こうかと思う。

とりあえず多様体って広い話題とつながりがあるし、勉強をしたいなら、何がしたいのかを明確にすること。全て知るのは現実的に無理
形状について興味があるなら微分幾何、球面上の関数について知りたいなら表現論…
キリないんだよなファック
どこ行くにしても微積線形集合位相は知っておいたほうがいいから、その辺ざっくりやって、「あー飽きただりー」ってなってから松本多様体を読むといいんじゃないか

飽きてる人にとってはいいカンフル剤になってくれるはず
松本多様体については、文字通りラノベラノベとして読めるような自分に到達できている*14ことを確認しがてら半分くらいまで読む(1の分割か微分形式とからへんまで)
数多いる松本多様体レビュアーたちが言っている通り、この本はあくまで多様体の用語を丁寧に説明するのにかなりの尺割いているだけの本なので、その先の応用の話はあまり充実してない。例えば、微分形式については筆者的には他の本のほうが相性良かった*15ので、半分くらいまで読んだら「卒業」して別の多様体本に手を付けてみていいと思う。
プリティでピュアピュアなマスの人たちは志賀多様体*16とか服部多様体*17勧めてくるけれど、自分は図や例が豊富な坪井多様体*18、不思議と頭に入る文体(理由は不明。なぜ?)のトゥー多様体*19が筆者的には良かった。なんか知らないけれどトゥー多様体の読みやすさは個人的に圧倒的だった。高いことを除けばパーペキだった。多様体の本は他にもいろいろあるので、ラノベ松本多様体やプリティでピュアピュアなマスの人たちによる偏った選書に振り回されず、大学図書館とかでデムパ電波の波長が合う好みに合うものを見つけるまで試し読みするのがいいと思う。
その先は興味関心のある分野で都度都度ググって資料を探していくのがいいんじゃないか…

 

というわけで、本題に戻ると、すでに「位相のこころ」*20を知ってる人向けのラノベなんだよなぁという

でもお気軽にラノベラノベって言うけどメディアミックスラノベてかノベライズは舞城王太郎みたいな文学シャン(文学も書ける有名な著者)でもないと原作知らん勢は読まないでしょ…

それと同じ(?)で、松本多様体も松本さん知ってる数学徒か集合位相と数学部の解析学(つまり原作)知ってる人向けのノベライズ*21って考えないと、ラノベって文字列に目をやられてムスカのように海に墜落して氏ね死ぬ

今日も数学者のことラノベラノベって連呼してるyou、そう、ユーだyo。ユーはそうやって目に見えない人たちをバッサバッサと殺すことで、数学の間口を狭めてハラスメントの温床を次世代に遺していく…

*1:エンジニア「俺読んだけど??」←なかなかないって言ってんだから「ああ俺稀に見る人材だったんだな~承認~」って黙って脳内補完してほしいんですけど~~~~?

*2:情報系の人で統計多様体のこと知ろうとしてる」とか、「モノづくりやシミュレーション系が高じてしゃーなしに現代幾何学に触れようとしてる人以外は」などとわざわざご丁寧に具体的な断り書きつけたほうがいいのか??

*3:「贅肉だらけの文章書くてめぇ(筆者)がそれ言うのかよスットコドッコイ」って思われるだろうけれど、松本多様体くどさに関しては筆者のそれととどっこいだと思う

*4:焦点ぼやけた例だと文字を読める、とか。焦点合わせた例?上の方で「数学科の授業受けた人向けのわかりやすさ」みたいなこと書いた気がするんだけど…

*5:もはや化石。インターネットの治安が今とは違った意味で悪かった、あるいは自由だった時代の産物。

*6:何が説明不足かって、わざわざ数学科しか使わなさげな、学習コストがそれなりに高い概念(使わなさげなのであって使うと言えば使うんだろうけど、何人使った?本当に必要?)を中途半端な導入で習得させにかかってるところ…

*7:親切?時間をかけているうえに彼らは数学以外のことをあんまり勉強しないがちだから当たり前なんだな、これが…工学部の人間の気持ちとか多分考えたことがない。「傍線部の気持ちを考えましょう」は作者の気持ちを考えろとはノットイコールなんだから文句をつけないで多少はできない人の気持ちを考えてほしい。アカデミアの風通しを良くしたいんじゃなかったっけ?パワハラ受けて心神喪失しちゃったよ~って脳内彼女に泣きついてたじゃん。

*8:それらの用語を導入するとなにか利便性が高まるゥんですか?距離空間位相空間っていうまるで別モノを指すかのようなその実似たもの同士を指す言葉がありますが、この二つの区別はどういうときに重要になるんですか?二位じゃダメなんですか?みたいな疑問を解消する時間的コストを支払える人間は少数派だ。※ネットで目立つ「数学情報」がEmanかときわ台か教授のサイトくらいしか見当たらなかった時代の話

*9:それ満たしてる体系は本当に実数と呼べるの?あと実数だけに限られるんですか?

*10:筆者の自己紹介になってしまっている

*11:実際糾弾される程度の問題点を孕んではいると思うが

*12:今の大学生はそうでもないかも。自分くらいの世代までのドクサだと思って聞き流して…(じゃあ書くなよ)

*13:まるで説明できてない…

*14:大事なことを言うと、筆者は年数回しか教科書開いてないのでそんな状態に到達したことが無い

*15:筆者の場合は、まず高校のときに物理の先生が低次元の微分形式使って要所をわかりやすく導入してくれたという歴がありつつ、機電系の電に進学したので、電磁気を一年次から習得「させられて」いた。つまりストークスの定理について頭に入っている前提で松本多様体をやった。数学科ではどうも逆らしい。というかそっちのほうが変な先入観無くてスムーズに勉強できそうで羨ま死刑。で、微分形式の本については、和達「微分・位相幾何」の微分形式の項目が、低次元ユークリッド空間中の話題に絞られてて(確かそうだったと思う)筆者的には好みだった。どうせユークリッドさんにウメコミするじゃん?(しない?できない?課金して必要な知識盛ればいいじゃん。今は多様体本の話してるの!)フランダース微分形式の理論」は有名だけど、買った当時読みにくくて積ん読し幾星霜…

*16:岩波基礎数学のやつ。元のシリーズは半世紀くらい前。 https://www.iwanami.co.jp/book/b583348.html

*17:同じく半世紀くらい前に出た本の増補版。昔は手のひらくらいのサイズのシリーズで出てたはずだけど、装丁とかに賛否両論ありげな岩波オンデマンド入りしてしまった https://www.iwanami.co.jp/book/b559559.html

*18:前の二つと違って絶版してないよ!書店で割と売ってるよ! https://www.utp.or.jp/book/b302232.html

*19:分厚くて高いから図書館や人から借りて読むのがいいと思う。原著を嫁?数学研究者になるつもりはないので原著厨は黙ってて。 https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-1586-3.htm

*20:そういう名前の本がある。 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480089571/ いつだったか、「一刀斎というあだ名が痛々しい」って内容のツイートを見たけど、わかりみがある

*21:続編かつ合作、つまりダクソ2や、とある外伝バーチャロンって例えのほうが普通に例えとして適しているが…